https://digital.asahi.com/articles/DA3S15801140.html
https://book.asahi.com/article/15067736
>佐藤冬樹『関東大震災と民衆犯罪』は、意欲的だ。これまでの虐殺研究が軍隊・警察による権力犯罪の側面を重視し、国家責任を問うてきたのに対し、本書は民衆を差別する主体ととらえ、権力の思惑をも超える暴力性や残虐さがあったことを指摘する。その観点から、これまで在郷軍人会を中心に論じられてきた自警団の構成を見直し、「ふつうの地元民」こそが加害者であったという。

関東大震災と民衆犯罪 ――立件された一一四件の記録から (筑摩選書 262) - 佐藤 冬樹
>埼玉県を対象に調査をすすめた関原正裕『関東大震災 朝鮮人虐殺の真相 地域から読み解く』(新日本出版社・1980円)は、これとは対照的だ。国家権力の関与を重視し、自警団のなかでも在郷軍人会に着目して論を進める。災害時の教訓を得て終わるのではなく、虐殺を日本の植民地支配の歴史に位置づけなければならないという思いがあってこそだ。

関東大震災 朝鮮人虐殺の真相──地域から読み解く - 関原正裕
>この二つの書が明らかにした事柄は、必ずしも、互いに矛盾・対立するものではない。両者がどのようにかみ合うかを考えた時に、さらに奥行きのある歴史像が結ばれると思われる。
>流言に着目し、関東大震災と現在とをつないだのが、郭基煥『災害と外国人犯罪流言』だ。本書は、関東大震災時に朝鮮人が犯罪を行っているとの流言が広まったように、アジア・太平洋戦争、阪神淡路大震災、東日本大震災でも、朝鮮人・外国人犯罪の流言が見られたことを指摘する。著者は、災害時の心構えを伝えたいのではない。関東大震災時の流言が、時代を経て、あたかも事実であったかのように繰り返されてきた連鎖を問題にしているのだ。この連鎖を絶つには、過去を明らかにし、国家的な責任を果たすことこそが不可欠だろう。

災害と外国人犯罪流言:関東大震災から東日本大震災まで - 郭 基煥
>いずれの本からも、今、過去にせまる意味や方法、思索の深まりを知ることができる。「記録が見当たらない」として、過去と向き合わない政府との懸隔が歴然とした100年目であった。
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