2013年09月25日 大阪 夕刊 夕刊be水曜5面
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かとうたかのり(59歳)
口に1メートル超の木製ラッパ。ボーッと地鳴りのような低音を響かせる。公園での写真の撮影中、道行く人が目を見張った。オーストラリア先住民アボリジニーの管楽器「ディジュリドゥ」だ。シロアリに食われて空洞になったユーカリの木がそのまま楽器になっている。
千を超す世界の民族楽器を集め、自分で演奏する。小中高校などで開くコンサートでは30〜40の楽器をかわるがわる奏でることも。既存の楽器に飽きたらず、オリジナルの楽器を自ら作る。
根底にあるのは、幼稚園の頃、親から強制されて始めたピアノだ。バイエルまででやめた。好きになれないまま、コンプレックスだけが残った。好きな楽器に出合ったのは大学浪人中。尺八だった。雑音の混じった“味のある音”に心が和んだ。研修医時代は琵琶に支えられた。へとへとになって稽古に行くと、奏でるうちに、癒やし効果を体感した。
民族楽器の魅力を「雑音が多いこと」と説明する。「塩辛さだけでなく、甘さや苦さなど様々な味を含んだ天然塩のような音」という。
もとは麻酔科の医師だったが、民族楽器による音楽療法を試みようと20年ほど前に精神科へ。演奏を聴かせるのでなく、即興で演奏してもらう。「民族楽器は簡単なつくりのものが大半。上手下手を問わない原始的な楽器に触れることで“原点”に戻れる」というのが持論だ。
幸せを感じる心を養うのが音楽療法だという。「幸せとは失った時に気付くもの。実は日常が幸せなんです」。戻るべき原点とは日常のことだった。民族楽器は、そこへ誘(いざな)うスイッチとなる。
●11月に琵琶演奏会
11月3日午後1時半から、兵庫県西宮市の宮水ホールで、琵琶の演奏会に出演。ブログ「音のある生活研究所」(http://ippuh.seesaa.net/)。
(成川彩)
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「民族楽器の魅力を「雑音が多いこと」と説明する。」
「幸せとは失った時に気付くもの。実は日常が幸せなんです」。
民族楽器による音楽療法。深い。
ラベル:埋蔵文化人
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