2013年11月07日 大阪 夕刊 1社会
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街角に立つ近代建築物を観光資源にしようと、大阪市が中心街の建物を「生きた建築ミュージアム」に選び、外観補修やライトアップの支援を始める。個性的な造りの建築物は若い世代に好まれ、テナントの若返りも進んでいる。
大阪では金融や薬問屋、繊維問屋の街として栄えた船場を中心に、幕末から昭和初期に建てられた近代建築が残る。その数は100棟を超えると言われ、大阪歴史博物館の酒井一光学芸員によると、目立ちたがり屋の町人の気風からか、装飾の凝ったビルが多い。
これに着目した大阪市は6月から都市計画や建築の専門家7人による有識者会議を開催。市中心部を大きな美術館になぞらえ、建築物を展示品に見立てる「生きた建築ミュージアム」の選定を進めてきた。今も活用され、街の歴史や文化を物語る建築物を「生きた建築」と定義づけた。
第1弾として1930年築の三井住友銀行大阪本店ビルや35年築で2004年に建て替えられた大阪証券取引所ビル、薬の街・道修町に立つ28年築の武田道修町ビルなど28件を選んだ。今年度は外観補修やライトアップといった再生事業の補助金計1600万円を予算化し、選ばれた28件を対象に事業案を募る予定だ。
横浜市では88年から同様の支援を続ける。港町の歴史を物語る近代建築53件を登録し、改修や維持管理の費用を助成している。3年前からは中心部の築20年以上のビルを対象に改修費用を助成し、アーティストやクリエーターの入居を促す「芸術不動産リノベーション助成」も始めている。
■若者に人気、バーやカフェ入居
部屋ごとに天井の高さや広さが違ったり、廊下や共用部に装飾が施されていたりと、個性豊かな近代建築は若者たちに人気が高い。
大阪市中央区伏見町のオフィス街に立つ鉄筋4階建ての芝川ビルは、昭和初期の1927年に建てられた。管理会社によると、以前は「古くて使い勝手が悪く、いつ取り壊してもおかしくない物件」だった。
しかし8年前、レトロビルオーナーの集まりに参加した社長が、丁寧に補修を重ねるオーナーたちの話を聞いて方針転換。内装を完成当初の状態に戻し、機械メーカーなどの事務所が主体だったテナントは、バーやチョコレート店などに変わった。入居者の年齢層は主に30〜40代という。
芝川ビルの地下1階に08年に入居した「Mole&Hosoi Coffees」の店主の細井立矢さん(41)は「ドアの重厚さや壁の古さ具合など、落ち着きがあり、存在感のあるビルのレトロ感が気に入った」と入居の理由を話す。
旧報徳銀行大阪支店として1922年に完成した新井ビルでも銀行の営業室として使われた1、2階に05年から洋菓子店「五感」が店を構え、幅広い年齢層の人が訪れるようになった。
京都工芸繊維大学の石田潤一郎教授(近代建築史)は「外観を残しつつ内装を変えて自由に使いこなす例も増えている。現代のオフィスビルにない懐かしさ、個性の強さが評価されているのでは」と話す。
大阪市では23、24両日に各種見学ツアーを予定している。大阪市のホームページから「生きた建築ミュージアム事業」を検索するか、市住宅政策課(06・6208・9222)へ。(沢木香織)
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レトロが見直されているとはいい風潮だ。
但し、軍国主義の復活だけはいけません。
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